第143回 トラママのつぶやき「レースに向けての食事」について

アスリートフードマイスター2級の篠原知美が
数々のトライアスロン出場経験から“アスリートフード”についてお伝えします。

 みなさま、こんにちは。アスリートフードマイスターの篠原知美です。あっという間に最終回(≧▽≦)
何を書こうか悩みましたが、何人かの方からリクエストを頂きました「レースに向けての食事(基本編)」を今回はお話したいと思います。
 「トレーニング期」は第1回でお話しましたが、糖質+たんぱく質、ビタミン、ミネラルをバランスよくしっかりと摂ります。そうそう、糖質と炭水化物は別モノだよね?と思っている方が少なくないのですが、糖質と食物繊維を合わせたものを炭水化物と呼びます。
糖質は、単糖類・少糖類・多糖類と3つに分類されます。ブドウ糖や果糖など、食べてすぐ甘みを感じるものが単糖類、いも類のデンプンなど噛んでいくうちに甘みを感じるものが多糖類。構造がもっとも単純な糖である単糖類が消化・吸収が速くなります。東京マラソンのエイドでも、すぐにエネルギーになるようにと、ブドウ糖が配れられていますね。

【試合期 】目安:試合の1週間前ころから(注:競技や強度によって異なります。)
運動をされている方なら『カーボローディング』は聞いたことがあると思いますが、炭水化物の中の食物繊維はエネルギーを作らならないため、エネルギー源となる糖質を多く摂る『グリコーゲンローディング』をします。(カーボローディングよりアスリートっぽい響きw)
運動をする際は、筋肉と肝臓グリコーゲンを多く蓄えている方がエネルギー切れをおこさず、持久性パフォーマンスも高まるために、試合前には糖質の多い食事を摂り、筋肉と肝臓のグリコーゲン量を通常より増加させます。グリコーゲンローディングは、2時間以上運動を継続する種目、マラソン、トライアスロン、サッカー、テニス、その他などに効果的のようです。

<食事について>
☆ 試合 約1週間前~4日前 ☆
 50%糖質食
(普通の食事に近いもの)でバランスのよい食事 + しっかり休養(睡眠)
1日のエネルギーの半分を糖質で摂るようにします。
以前はこの期間に、高たんぱく質、高脂肪、低糖質+疲労困憊運動(オールアウト)をしていましたが、脂肪を多く摂ると胃腸の調子が悪くなるなど、体調を崩してしまうこともあり、現在は50%糖質食を中心にするよう改良されているようです。
運動量を減らすと消費カロリーも減るので、摂取カロリーにも注意!食べ過ぎて体重、体脂肪を増やさないように。

☆ 試合3~1日前 ☆
 高糖質・低脂肪食、ビタミン・ミネラル
は減らさずしっかりと!
 糖質が多く、できるだけ脂肪の少ない食品を。和食は、基本的に高糖質食。生ものはできるだけ摂らないように。
 例えば、 牛&豚肉ならモモ肉、ヒレ肉。鶏肉なら皮なし肉やササミ。 魚介類なら、タラ、カツオ、貝、イカ、えびなど。脂質の多い料理、油、バター、ドレッシング、マヨネーズなどは控えめに。 主食(ご飯、うどん、パスタ、パンなど)や果物などの糖質を豊富に含む食品を多く摂るように。
普段、ご飯を1杯食べる人なら1.5~2杯。その分、脂質を減らす。パスタや丼ぶりものなどは、簡単に糖質が摂れます。そのため、試合前日はパスタを食べる方が多いですね。

<運動について>
試合約1週間前から前日まで、運動は徐々に時間を短くして行き、強度もピリっと刺激を入れる程度で中程度から軽度に。しっかり睡眠を取り疲れをためないように。
上記のグリコーゲンローディングを実施すると、個人差はあるものの、筋肉中のグリコーゲンは通常の2~3倍、肝臓中のグリコーゲンは2倍程度に増加すると言われています。

 これらは、マラソンなど2時間以上運動を継続するスポーツに適していますが、その他のスポーツの場合は、高糖質食を試合の前日のみ、または2~3日前からでも大丈夫です。
 グリコーゲンローディングがうまくいくと体重が増えます。グリコーゲンは水に溶けた状態で筋肉に蓄えられるため、筋肉内の水分量が増えるからです。体重が増えすぎてしまうと、パフォーマンスにも影響してしまいます。グリコーゲンローディングを行う場合は、ぶっつけ本番ではなく、事前に試してみて、自分のベストコンディションになるよう調節してください。

☆ 試合当日 ☆
 個人差はありますが、消化・吸収には約3時間かかると言われています。また、緊張をすると普段より消化に時間がかかることもあります。試合の開始時間から逆算して食事を摂る時間を考えましょう。
糖質を多めに、脂質やたんぱく質をその分少なめに。食物繊維は消化に時間がかかり、腹痛やお腹がゆるくなることもあるので控えめに。量も胃もたれしない程度に。
 遠征中などは、ホテルのビュッフェのこともあります。何を食べて何を控えるか、どのくらい食べるかなど自分で選べる力をつけるように。
スタート時間が近く、すぐにエネルギーに替えたい時は、消化・吸収が速く血糖値が急激に上昇しやすい、GI値が高い食品を。
GI(グリセミックインデックス):血糖値の上昇度から食品ごとの消化速度と体内での利用効率を指数化したもの。
GIが高い食品:砂糖、食パン、もち、白米、ブドウ糖など。
GIが低い食品:脂肪や食物繊維が多いもの。酢を使った食品など。牛乳・乳製品、大豆製品、食物繊維の多い食品と一緒に食べるとGIは低くなり血糖値の上昇はゆっくりになります。  

レース中 の補給食については、第2回でお話ししましたのでそちらを参照のこと(笑)。


写真:宮古島トライアスロン、レース当日のホテルでの朝食

☆ 試合期の注意点 ☆
試合期は、緊張や精神的なストレスで食欲が落ちたり、胃腸の調子が悪くなったり、眠れなかったりしがちです。できるだけ普段と同じような食生活をします。胃腸の働きも低下しますので、生もの、食べなれないものなどは控え、脂肪が少ない食事を摂ります。ストレスで体内のビタミンCの必要量が増えるため、ビタミンCを多く含む野菜や果物をいつもより多く摂るように。食物繊維を多く摂ると、腹痛や下痢の原因にもなるため、普段と変わらない程度に摂るように。水分は糖質を含むスポーツ飲料などを、喉が渇いたな、と思う前に摂るように。

今回まで5回に渡り、「トラママのつぶやき」にお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
「おいしく、楽しく、意識して!」を合言葉に、みなさまの食事が楽しく、カラダにもココロにも栄養をいっぱい与えて、パフォーマンスUPにつながりますように。
春からのシーズンも頑張っていきましょう(^_^)/


写真:東京マラソン2016前夜のわが家のお夕食

次回からは、アスリートフードマイスター同期で、お料理のプロのスーパーママ。林くみ子さんにバトンタッチです!

●アスリートフードマイスター2級
篠原 知美 (しのはら ともみ)
子育てをする2児の母でありながら、現役トライアスリート。第1回木更津トライアスロン(スプリントの部)での初代チャンピオンをはじめ、数々の大会で入賞経験あり。
2015年全日本トライアスロン宮古島大会では、完走率が52.2%という悪天候の中、また故障中にもかかわらず見事完走を果たす。
自らが競技を通して得た経験から、パフォーマンス向上を目指す上で、食の大切さを実感。国際線客室乗務員という前職の経験を活かし、現在アスリートフードマイスターとして、トライアスロンをはじめ、スポーツをする方々への食事指導、AFM養成講座のアテンドスタッフとして後輩の学習サポートや説明会にてアスリートフードマイスターの啓蒙活動に参加中。

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