第66回 食育現場レポート③ 立命館高校硬式野球部編

ジュニア・アスリートフードマイスターの岡嵜雄介が
学生スポーツの現場で取組まれている食育の実践をリポートしていきます!

ジュニア・アスリートフードマイスターの岡嵜雄介です。
私のコラムでは、学生スポーツの現場で行われている「食育」を中心に発信していきたいと考えています。
特に「身体を作りたい」、「大きくしたい」というご意見は多くのジュニア・アスリートを持つ保護者の皆様からご要望があるとお聞きします。
このコラムでは身体作りの観点で取組まれている食育現場をどんどん取材して行きたいと考えています。
第3回目は、京都にある立命館高校硬式野球部での食への取組みについてお伝えいたします。

立命館高校硬式野球部は、この春の春季京都府高校野球大会においてベスト4に進むなど近年力をつけている学校です。一見強豪私学に聞こえますが学校は府内でも有数の進学校で、強豪校とは異なり練習時間も平日1時間半、土曜日も授業という文武両道を掲げるチームです。今回は、2012年秋から同チームを指揮している吉田達朗監督にお話を伺ってきました。

●食事強化のきっかけ
 吉田監督がまだコーチだった2011年秋、同チームは近畿大会で天理高校と対戦し、惜しくも延長で敗れた。この試合はスコアこそ接戦の延長戦だったが、内容は圧倒的な力の差があったと吉田監督は語る。その力の差は、技術の差もさることながら圧倒的な体格の差を選手達は痛感したそうだ。
「今のままでは勝てない。」という思いと、以前から部としてプロテインを購入していたが、実際には飲んでいないという現状も重なった。そこで、吉田監督の発案から3リットルタッパーに白米を詰めてくるということから再スタートした。そして夏を終え新チームになってから食事に加え、ウエイトトレーニングを本格的に導入した。

●冬の取組み
 立命館高校が春の大会で躍進した理由の一つとして、冬の取組みがある。
 以前の3リットルタッパーは平日に実施し、休日は業者から温かいご飯を宅配してもらい、それをはかりで一人1,5キロずつ計って食べてきた。業者から届く温かいご飯は、冬の弁当の冷たいご飯に比べて食が進むと吉田監督は言う。この話は、前回のコラムでも紹介した向日市野球スポーツ少年団の生野監督も同じことを話していた。
 またそれに加え、体重測定も冬場になり毎日行うようになった。そして同時に冬場のウエイトトレーニングも週5回に頻度を上げて行っていった。その結果チーム平均体重は春のメンバー全員で68キロまでアップした。立命館高校の春の大会のメンバー20人のうち18人が175センチ以下ということからこの平均68キロという数値は冬の成果の現れだと感じる。


●立命館ならではの取り組み
 立命館高校には、他のチームにはない珍しい取り組みがある。それはプロテインの中身である。市販のプロテイン2杯に対して、きな粉2杯をウエイトトレーニング後に必ず摂取している。
 このきな粉がポイントだ。
 始まりは、プロテインのコストを抑えるのに何か方法はないかと考えていたところ、監督の同級生で、きな粉屋を営む方に、特別なきな粉の存在を知らされたのがきっかけだった。きな粉といってもスーパーなどにあるきな粉と違い、細かくひいた良質なきな粉である。本来なら固形物なのでプロテインと混ぜた時は分離するが、このきな粉はプロテインと同じように混ざる。 吸収率はプロテインよりは低いが、味が濃厚になりおいしいそうだ。
良質なきな粉なため、スーパーなどで販売しているきな粉より価格は高いが、安いプロテインの6分の1の価格で購入できる。そう考えるとコストパフォーマンスの面で優れている。


●夏に向けて
 最後に、これから夏に向けてどの様な対策を考えているかを吉田監督に聞いてみた。
1、リカバリー
2、食べやすくするのが大切
3、とにかく炭水化物
この3つがキーワードになります。せっかく作った身体を夏の追い込みで元に戻っては意味がありません。追い込みをしながら身体を維持するのが今後の対策です。

 今回のコラムで取り上げた立命館高校硬式野球部の食の取組みは、進学校がお手本とすべき取組みだ。練習時間や能力の差は食事や他の要素で埋めることが十分可能であるということがこのコラムを通じてわかった。

●ジュニア・アスリートフードマイスター
岡嵜 雄介(おかざきゆうすけ)
野球歴20年。高校、大学、社会人野球(企業)、独立リーグなどでプレー。
引退後、広告代理店での企画営業を経て、2011年度より教壇に立つ。2012年度の夏のインターハイではホッケー部の監督としてインターハイベスト8進出。2013年度、京都で初めてプロアマ規定解禁の高校野球の指導者となる。
特に学生スポーツにおける「食育」に興味を持ち、日々実践、研究している。

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