ジュニア・アスリートフードマイスターの岡嵜雄介が
学生スポーツの現場で取組まれている食育の実践をリポートしていきます!
ジュニア・アスリートフードマイスターの岡嵜雄介です。
私のコラムでは、学生スポーツの現場で行われている「食育」を中心に発信していきたいと考えています。
特に「身体を作りたい」、「大きくしたい」というご意見は多くのジュニア・アスリートを持つ保護者の皆様からご要望があるとお聞きします。
このコラムでは身体作りの観点で取組まれている食育現場をどんどん取材して行きたいと考えています。
最終回の第6回目は、広島にある武田高等学校硬式野球部での食への取組みについてお伝えいたします。
武田高等学校硬式野球部は、創部7年目の学校です。学校は東広島市の山間にある私立学校で、平日の練習時間は50分と日本一短い練習時間です。文武両道を掲げ、少ない時間でも勝負できるチームに今改革を進めているところです。最終回の今回は、私の勤務校である武田高校での1年に及ぶ食の取り組みをレポートしたいと思います。
●4月(食事強化スタート)
2014年の4月に武田高校のコーチに就任してまず思ったのが選手の線の細さでした。昨今では食事に力を入れる高校は珍しくなくなってきましたが、明らかに平均を大きく下回る身体つきに驚きました。そこでまずおにぎりをマネージャーに握ってもらうことからスタートしました。最初は、とにかく量をやみくもに食べるだけで、握った数でその日食べる量が決まると言うものでした。
すると問題がおきます。食べる量に個人差ができ、全くチームとしての取組みとしては機能しなくなりました。
●5月(おにぎりノート開始&卵かけご飯)
食べる量に個人差ができ、おにぎりを残してしまう日が多くなりました。寮の冷凍庫がおにぎりでいっぱいになる事も増えてきました。そこで「おにぎり自己申告制」を導入しました。「おにぎりノート」を作り、朝の自分の体調を考慮し自分で食べられる個数を記入する仕組みを取り入れました。また、おにぎりの大きさをコンビニのおにぎりと同じサイズに統一することで、握る側のマネージャーも計算してお米を炊くようになりました。
このころから毎週月曜日を「リカバリーの日」と題して、練習中に卵かけご飯を食べる取組みを始めました。卵は学校の近くの養鶏場に協力していただき、新鮮な卵を届けて頂けるようになりました。
●6月(卵かけご飯中断⇒プロテイン摂取開始)
6月に入り、梅雨と気温上昇に伴い、卵かけご飯を一時中断することにしました。この時期は一気に気温も上がり発汗量も増えるため体重が減る時期です。そこでプロテインの摂取を積極的に行うことにしました。コストの面も考え、以前取材させて頂いた立命館高校さんも導入されている京都のきな粉を取り寄せ、プロテイン、きな粉を2:2の割合で摂取していきました。
●7月(栄養講習&体重管理ボード&補食の研究)
7月の後半に新チームがスタートして、意識アップのために健康体力研究所のスタッフの方に栄養講習を開いて頂きました。保護者の方も出席していただいて、この夏の食意識を考え直すきっかけを作りました。また夏休みの間は毎日体重測定を行い部員が見える位置にボードを置き、記入させていきました。前日より体重が減っていたら赤字で書くことでその日の食事に意識を持たせました。
また、練習の休憩中や水分補給時に飴をなめさせる取組みも行いました。カロリーとしては数十カロリーですが、食への意識を持続するには良かったと思います。
●8月(寮の食事診断 栄養チェック)
8月に入り寮の食事を業者に診断して頂き、栄養チェックシートを出して貰いました。足りない栄養素を数値化していただき、普段のマネージャーが作る補食で補う取組みを行いました。そうめんなどをマネージャーが進んで取組むことで、選手だけでなくマネージャーも部員としての意識が高まりました。
●9月(マネージャー食事現場見学)
夏休みで食事への興味が湧いたマネージャーを他のチームへ派遣し、食事現場の見学を行いました。中学のクラブチームなどは、お母様方が昼食を作るチームがあります。その現場を見せて頂くことによって手際やバリエーションの多さを学ぶことが出来ました。
●10月(卵かけご飯の再スタート)
気温も徐々に下がってきて、一時中断していた卵かけごはんを再開させました。この卵かけご飯再開を楽しみにしていた選手も多く、少しずつではありますが、食への意識向上が見られるようになりました。
●11月(新おにぎりノート)
おにぎりノートも改良されて、おにぎりの個数とその日の体重を記入できる様になりました。ノートを活用できる様になり、一言コメントの欄に書く選手の言葉もより具体性を持ったものが多くなってきました。
以上の様な取組みをこの4月から行うことによってチーム平均体重が+5キロアップしました。
●武田高校の食事への取組みを振り返って
季節やその時のチーム状況に応じて様々な取組みを行ってきましたが、やはり一番は強く思うのは、食事を通して身体だけでなく、心の成長も大切にしたいと言うことです。その例として、武田高校は活動時間が限られていますが、どんなに時間が掛っても食べた食器は自分で一人一人洗うようにしています。この食器洗いがグランドだけでなく、各家庭でもお手伝いと言う形で現れることを期待しています。また、選手だけでなくマネージャーも食事に対して考えるきっかけを出来るだけ多く作るように取組んできました。
昨今食事に対してもいろいろな考えや理論が出回っていますが、食事とは食育であり、食育とは「食べ育てる」ものでなくてはいけないと考えています。一番は子どもたちの心身の成長が目的になると信じてこれからもいろいろな事にチャレンジしていきたいと思います。
今回コラムを1年間寄稿させて頂き、とても素晴らしい貴重な経験となりました。今後とも食事に興味を持ち、またいろいろな発見をしていきたいと思っています。どうも1年間ありがとうございました。
●ジュニア・アスリートフードマイスター
岡嵜 雄介(おかざきゆうすけ)
野球歴20年。高校、大学、社会人野球(企業)、独立リーグなどでプレー。
引退後、広告代理店での企画営業を経て、2011年度より教壇に立つ。2012年度の夏のインターハイではホッケー部の監督としてインターハイベスト8進出。2013年度、京都で初めてプロアマ規定解禁の高校野球の指導者となる。
特に学生スポーツにおける「食育」に興味を持ち、日々実践、研究している。
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