第50回 食育現場レポート① 京都大学アメフト部編

ジュニア・アスリートフードマイスターの岡嵜雄介が
学生スポーツの現場で取組まれている食育の実践をリポートしていきます!

 はじめまして。ジュニア・アスリートフードマイスターの岡嵜雄介です。
 私のコラムでは、学生スポーツの現場で行われている「食育」を中心に発信していきたいと考えています。特に「身体を作りたい」、「大きくしたい」というご意見は多くのジュニア・アスリートを持つ保護者の皆様からご要望があるとお聞きます。このコラムでは身体作りの観点で取組まれている食育現場をどんどん取材して行きたいと考えています。第1回目は、京都大学アメリカンフットボール部ギャングスターズでの取組みについてお伝えいたします。

 京都大学ギャングスターズは、言わずと知れた超名門アメリカンフットボール部で、日本一4回、学生日本一6回の実績を誇る名門中の名門であります。
今回は、2012年から同チームを指揮している西村大介監督、NTR(Nutrition Trainer)の学生さんを交えて、同チームの食への取組みについて伺ってきました。

●食への変革期
 京都大学ギャングスターズが食への取組みを新たにスタートさせたのは、長年クラブハウスで食事を担当されていたスタッフの方が今年の12月に引退され、新たにスタッフを招き入れるタイミングからである。
 部員の95%が下宿生というギャングスターズでは、基本的に部員はクラブハウスで食事をするようになっている。これは下宿する学生にとって、大変ありがたいシステムである。
 今年の1月、クラブハウスの食事を作るスタッフにスポーツ栄養士の方も加わり、部員の食への意識改革を本格的にスタートさせた。スタート段階であるため現在も試行錯誤しながらシステムを構築しているそうだ。

●ギャングスターズの1日の食事例
 部員の1日の食事例は、クラブハウスで朝食を食べ、昼食はクラブハウスで用意されたお米を2合タッパーに詰め、学校の食堂で購入した通常メニューと一緒に食す。その後、練習前の補食、練習後の補食、夕食は再びクラブハウスで食事、場合によっては夜食も用意されているそうだ。

クラブハウスに宿泊している学生はいないものの、毎日このクラブハウスを起点に活動をしている様子がわかる。 また、昼食を摂る学校の食堂もギャングスターズ割引という、あらかじめ食堂と相談して、なるべく安く、量をたくさん食べられる工夫がなされている。補食に関しては、練習前はゼリー、練習後はバナナやおにぎりといった工夫もみられる。1日の摂取カロリーの目標値は5500キロ~6000キロカロリーと目標設定してある。これは、一般成人男性の摂取カロリーが2600キロカロリーなのに対して倍近くの設定値である。身体と身体がぶつかり合う、コンタクトが多いアメリカンフットボールの競技の特性上これくらいの設定数値でなければ技術の向上や故障しない身体作りは難しいのである。

●ギャングスターズの食意識の取組み
 1日の食事を摂るだけでは、ギャングスターズの食への取組みは終わらない。クラブハウスでの毎日の体重測定、定期的な体組成のチェック。
時には裸の写真を撮ってトレーニング過程での身体の変化を意識させている。オフシーズンの目標体重として、ディフェンスであればプラス10キロ、オフェンスは5キロとポジション別に設定してある。

 その他、選手への食に対する意識づけも工夫している。月一回の栄養ミーティングを実施したり、トレーナーとNTRが連携して身体作りの為の個人面談を繰り返し行っている。その面談で選手たちは、日ごろの食への疑問や悩みをトレーナーやNTRの学生とすり合わせを行い、食への意識もより深まっているようだ。
 また、毎年のように入学してくる1年生部員に向けても丁寧な食の意識付けを行っている。「1年生は基本的には身体が出来ないと試合に出ることはありません」と西村監督も言われるように、1年生の1年間は、受験明けの生徒も多いことから、基礎的なトレーニング、アメフトの面白さ、ルール、戦術の勉強、食の習慣を定着させる期間と位置づけ、じっくりと時間をかけてアスリートの意識を備えるシステムがギャングスターズにはある。

●目的の手段化
 京都大学ギャングスターズの目標は「日本一」、目的は「社会をリードする人材の輩出」である。
西村監督は語る。
「京都大学アメリカンフットボール部で行われている、すべての取組みが目的のための手段になっていなければならない。アメリカンフットボールが上手いからと言って社会に出て何の特になるのか。そうじゃない。アメリカンフットボールをする過程で学んだすべてのことが、「社会をリードする人材の輩出」に繋がってないといけない。」
つまり「目的の手段化」なのであると。

 今回のコラムで取り上げた多くのギャングスターズの食への取組みも、「社会をリードする人材の輩出」という目的の為の手段なのである。
 アスリートの食への取組みは、その先にある目的のための手段になってなければならないと改めてこのコラムを通じて感じるのであった。

●ジュニア・アスリートフードマイスター
岡嵜 雄介(おかざきゆうすけ)
野球歴20年。高校、大学、社会人野球(企業)、独立リーグなどでプレー。
引退後、広告代理店での企画営業を経て、2011年度より教壇に立つ。2012年度の夏のインターハイではホッケー部の監督としてインターハイベスト8進出。2013年度、京都で初めてプロアマ規定解禁の高校野球の指導者となる。
特に学生スポーツにおける「食育」に興味を持ち、日々実践、研究している。

アスリートフードマイスター養成講座はこちら>

カテゴリー: 未分類   パーマリンク