ジュニア・アスリートフードマイスター 服部 貴美子が大人アスリートに向けて
「ココロとカラダの健康を保つ」をテーマに皆様にお伝えします!
スポーツのための栄養学というと、ウエイトコントロールや筋肉量のアップなどに意識が向きがちですが、実はもっと大切なポイントがあります。それは、日頃のトレーニングの成果を本番で発揮できるよう、当日に病気をしないこと! 「そんなこと当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、激しいトレーニングや試合に対するプレッシャーなどがストレスとなって身体の抵抗力(免疫力)を低下させてしまい、風邪をひいたり発熱したりするアスリートも少なくないのです。いわゆる「本番に弱いタイプ」にならないためには、ストレスがかかっても揺るがない抵抗力を、日頃の食事や生活習慣によって培っておくことが大切なんです。
そこで注目すべきは、「乳酸菌」の摂取。
イギリスの大学で、自転車部、トライアスロン部、陸上部(中長距離走)、水泳部等に所属する運動選手を対象に乳酸菌飲料の飲用試験を実施したところ、上気道感染症(いわゆる風邪)の発症率が低減する効果が確認されたそうです。
乳酸菌を含む食べ物と聞くと、ヨーグルトなどの乳製品がまっさきに思い浮かぶかもしれませんが、乳酸菌はあらゆる発酵食品の中に含まれています。たとえば、キムチ、ピクルス、漬物などには植物性の乳酸菌がたっぷり。また、鮒寿司や納豆など和の伝統食品にも乳酸菌は含まれています。日本人の場合、乳製品にアレルギーがあったり、乳糖をうまく分解できずにお腹がゴロゴロする…なんて方も多いようですから、わが国で昔から愛用されてきた食品を見直してみるのもいいでしょう。毎日少しずつ摂取するには、味噌、しょうゆなどの調味料を活用すると便利ですよ。
暑い季節の夏バテ防止食品としておすすめしたいのが「甘酒」です。
甘酒には、乳酸菌のほか、糖質とそれをエネルギーに変えるビタミンB1、エネルギー代謝に欠かせないビタミンB2、たんぱく質の代謝に働くビタミンB6、食物繊維とその栄養になるオリゴ糖、アミノ酸などが含まれており、「飲む点滴」と呼ばれるほど。マラソンレースのエイドで振舞われることも少なくありません。どちらかとうと寒い季節の飲み物というイメージが強いですが、江戸時代は夏のスタミナドリンクとして重宝されていたようで、俳句では夏の季語とされています。
そのまま飲んでもおいしいですが、ダシ汁や刻んだ梅干しなどを加えてドレッシングやディップにしたり、キャベツなどの葉野菜に混ぜんで即席漬けにしたりと、常備しておけば何かと便利に使えます。また、マクロビオティックという玄米菜食を主とした食事法では砂糖の代用品として玄米甘酒を使われますので、甘いものを控えている人は試してみてはいかがでしょうか。
食品スーパーなどをチェックしてみたところ、生タイプ(ストレートで飲めるものと希釈するタイプのものがありました)のほか、フリーズドドライの商品もありました。ひとり分だけ欲しいときや、携帯・保存に便利ですね。
もちろん、麹から手作りすることもできます。万能調味料として人気の「塩麹」も一緒につくっておけば、甘いおやつからしょっぱい惣菜まで応用範囲が広がりそう。食欲が落ちる夏のコンディション調整のひとつの方法として、採り入れてみてはいかがですか?
参考文献
日本栄養士会 健康増進のしおり2012-4
ヤクルト ニュースリリース
http://www.yakult.co.jp/news/article.php?num=521
●ジュニア・アスリートフードマイスター
服部 貴美子(はっとりきみこ)
プロのライター(記者)として活動中。また、地元・神戸のランニングイベントの実行委員を務めたり、複数のサークルに所属して仲間と一緒に走ったりしています。高校時代に摂食障害を経験したことをきっかけに、食について正しい知識を身につけたいと栄養士の資格を取得。
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