第54回 鉄分のお話

ジュニア・アスリートフードマイスターの一色ふみが
楽しいお話やレシピを書いていきます!

こんにちは!ジュニア・アスリートフードマイスターの一色です。
私は2009~11年に青年海外協力隊としてエチオピアに派遣されていました。
というわけで、今回はエチオピアを絡めたお話をしようと思います。

エチオピアといえばマラソンが有名ですね。世界記録保持者を多く輩出するエチオピア、いったいどんな食生活でしょうか? 分析してみましょう。

まずエチオピアの主食は、インジェラと呼ばれる酸っぱいパンケーキ。それに豆粉のシチューをかけ、ちぎりながら食べるのが一般的。(↓参照)

しかしエチオピアの食の栄養価は決して高くありません。
一般的な家庭料理ではビタミンを多く含む野菜の摂取量が極めて低く、また内陸国なので魚介類を食べる習慣もなく、海産物から摂取できるヨウ素(成長ホルモンに関する栄養素)も不足しており、成長障害・発達障害などの深刻な問題もあります。

アスリートにも大事な体を構成するたんぱく質ですが、一般的なエチオピアの家庭ではお祝い事以外で肉や卵を口にすることがあまりなく、良質な動物性たんぱく質(肉・魚・卵)の摂取の機会は非常に少ないです。
またエチオピアのアスリート達に関してはスポーツ栄養の知識が十分に普及していないのも現状。世界最貧国とも言われるこの国では、市民レベルの選手はもちろんナショナルチームの選手の中にさえも、貧しさゆえお腹をすかせて練習している選手がたくさんいます。

彼らの強さは先天的な身体能力や生活環境も大いに関係するとは思いますが、貧しい食環境でも高記録保持の選手を多く輩出しているのですから、もしも彼らに十分な食事と栄養管理が加われば更なる高記録の可能性を秘めているのではないかと、私は思います。

とはいえ、エチオピアの食事には侮れない面もあります。主食のインジェラは数日間しっかり発酵させた発酵食品なので抗酸化作用も高く、その原料となる穀物は高タンパク。
またアスリートに必要不可欠な「鉄分」が豊富に含まれています。

作るときに原料の粉を水で薄めるので一度に摂取できる鉄分はそこまで多くはありませんが、幼い頃から三食毎日それを食べている彼らは継続的に鉄分を体に取り込むことができています。もしかしたらそれが彼らの高い持久力の秘密かもしれませんね。

鉄分は血中の酸素を全身に運ぶ重要な成分。酸素を多く利用するアスリートには不可欠です。しかし汗と一緒に流れ出てしまう成分でもあり、十分な量の摂取が難しいうえに吸収されにくいという難点もあります。

鉄は色の濃い野菜やレバーに多く含まれますが、鉄のフライパンで調理した料理や、鉄瓶で沸かしたお湯からも鉄が摂取できるということをご存知ですか?
またそこから摂取できる鉄は、「二価鉄」と呼ばれるむしろ体に吸収されやすい鉄なのです。アスリートはもちろん貧血の方や鉄を意識している方は、鉄製調理器具をぜひ活用してみてください。

さて今回のレシピはそんな「鉄」に注目してみました。
料理が苦手な方も大丈夫、難しいこと抜きの丼レシピです!

摂取の難しい鉄を効率よく体に取り込むには食材の組み合わせにヒントが隠れています。
詳しくはレシピの後の解説をご覧ください!

【鉄分レシピ!5分でできる美味い丼♪】

●豚肉 入れたいだけ
●小松菜 入れたいだけ
●卵黄 1コ分
鉄分豊富な3食材を使いました。

作り方は簡単。
塩コショウした豚肉と小松菜を、しょうゆ、ニンニク(チューブでOK)、レモン汁(市販の瓶入りのものが便利です)で炒めて、ご飯に乗っけて卵黄を落とせばできあがり!
お好みでゴマや海苔をふりかけて。彩りにトマトなど。
卵黄をつぶし混ぜながら召し上がれ♪

鉄の1日必要量は10~12mg。
このレシピでは例えば豚肉100g、小松菜2株=約80gとして、鉄が約4mg摂れるので1日必要量の約1/3が摂れます。これを鉄製フライパンで調理すればさらに1~1.5mgほどプラスされます!

残念ながら鉄は吸収されにくい成分。しかし、ビタミンCや動物性たんぱく質(肉、魚、卵)と一緒に摂ることで吸収されやすくなります。
このレシピではレモン汁・豚肉・卵を一緒に調理するので、小松菜をはじめ各食材に含まれる鉄分が効率よく吸収されます。
(ちなみに今回使っている小松菜は優秀な野菜。鉄分と一緒にビタミンCもたっぷり含まれているので、それだけで効率よく鉄分が吸収されます。)

普段の食事でも食後にフルーツを食べるようにしておくと、フルーツのビタミンCが食材に含まれる鉄の吸収を助けるのでオススメです。

このような組み合わせをヒントにしながら、特に持久系のスポーツをされる方はしっかり鉄を意識して継続的に摂取していきましょう。

ひとつ注意点。
緑茶やコーヒーに含まれる成分(タンニン)は鉄の吸収を妨げてしまいます。
せっかく摂れる鉄分を無駄にしないためにも、食事の前後30分はコーヒーなどを控えるといいですね。

●ジュニア・アスリートフードマイスター
一色 ふみ(いっしき ふみ)
レザーメーカーでデザイン製作の仕事を経て2009年に青年海外協力隊に参加。エチオピアに派遣され首都の職業訓練校にて皮革の指導をし、二年間の活動ののち帰国。帰国後はレザー業界から離れ、食育とジュニア・アスリートフードマイスターの資格を取得。現在は協会で講座のアテンドスタッフをしている。夫はトレイルランナー。自身もアウトドアやスポーツを趣味とする。

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